特定技能の介護人材は服薬介助できる?任せられる業務範囲と注意点を解説

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介護施設の人手不足が深刻化するなか、特定技能の在留資格を持つ外国人介護人材の採用に関心を持つ施設が増えています。
受け入れを検討するうえで、「服薬介助は任せてもよいのか」「どこまでの業務を担当させられるのか」という疑問は、施設長や管理者にとって避けて通れないポイントです。
服薬介助は介護現場で日常的に行われる業務ですが、医療行為との境界線を正しく理解しておかなければ、法令違反や利用者の安全に関わるリスクが生じます。
この記事では、特定技能の介護人材に服薬介助を任せられるのか、任せられる業務範囲、医療行為との違い、技能実習生との違い、そして誤薬を防ぐための確認体制や教育の重要性について解説します。
特定技能「介護」の制度概要と任せられる業務範囲

特定技能「介護」は、一定の日本語能力と介護の知識・技能を持つ外国人が、日本の介護施設で就労するための在留資格です。
2019年の制度開始以降、介護分野での受け入れ人数は年々増加しています。
2025年4月からは訪問介護サービスへの従事も条件付きで認められるようになり、活躍の場が広がっています。
制度の枠組みと任せられる業務範囲を正確に把握しておくことが、適切な受け入れ体制づくりの出発点です。
特定技能「介護」で認められている業務の範囲
特定技能「介護」の在留資格で従事できる業務は、身体介護と生活援助を中心とした介護業務全般です。
食事介助、入浴介助、排泄介助、移乗・移動介助、着替えの介助などの身体介護に加え、居室の清掃、洗濯、調理補助といった生活支援業務も含まれます。
レクリエーションの企画・実施や、介護記録の記入といった付随業務も対象です。
日本人の介護職員と同じ業務を担当できるため、現場の戦力として即座に活躍が期待できます。
服薬介助は特定技能の介護人材に任せられるのか
結論として、服薬介助は特定技能の介護人材にも任せられます。
服薬介助は「原則として医行為ではない行為」に分類されており、介護職員が行える業務の範囲に含まれているためです。
ただし、任せられるのは以下の条件を満たす場合に限られます。
- 利用者の容態が安定している
- 医師や看護師による経過観察が不要な状態である
- 一包化された薬の準備、服薬の声かけ、飲み残しの確認といった範囲にとどまる
- 副作用のリスクが高い薬や、投薬量の調整が必要な薬の取り扱いではない
服薬介助のほかにも、軟膏の塗布、湿布の貼付、座薬の挿入、点眼なども「原則として医行為ではない行為」として、介護職員が行えると整理されています。
服薬介助と医療行為の境界線を正しく理解する

服薬介助は介護業務として認められていますが、すべての薬に関わる行為が許されているわけではありません。
医療行為との境界線を曖昧にしたまま業務を進めると、介護職員が意図せず医療行為を行ってしまうリスクがあるからです。
施設全体で正しい理解を共有し、外国人スタッフにもわかりやすく伝える仕組みが求められます。
介護職員が行える「原則として医行為ではない行為」一覧
厚生労働省の通知に基づき、介護職員が行える行為として整理されている主なものは次のとおりです。
| 行為 | 備考 |
|---|---|
| 一包化された内服薬の服薬介助 | 飲み忘れの声かけ・確認を含む |
| 軟膏の塗布 | 褥瘡の処置は除く |
| 湿布の貼付 | 医師の指示に基づくもの |
| 座薬の挿入 | 容態が安定している利用者に限る |
| 点眼 | 容態が安定している利用者に限る |
| 体温・血圧・酸素飽和度の測定 | 自動測定器を使用 |
| 爪切り | 異常のない爪に限る |
| 耳垢の除去 | 耳垢塞栓を除く |
上記の行為であっても、利用者の容態が不安定な場合や、専門的な判断が必要な場面では医療職に引き継ぐ必要があります。
服薬介助で注意すべき「やってはいけない行為」
服薬介助といっても、介護職員が行ってはならない行為として明確に線引きされているものがあります。
- 注射や点滴の実施
- 処方内容の変更や薬の選択
- 一包化されていない薬の分包や仕分け
- インスリン注射の実施(自己注射の見守りは可)
- 摘便や導尿
- 経管栄養の接続・注入速度の調整(一定の研修修了者は例外)
上記に挙げた行為は医療行為にあたり、医師または看護師が行う必要があります。
当然、特定技能の外国人介護人材に対しても、この区分は日本人職員と同じ基準で適用されます。
技能実習生との違いと特定技能の優位性

外国人介護人材の受け入れ制度は複数あり、特定技能と技能実習では制度の目的や業務範囲、在留期間に違いがあります。
採用する側がこの違いを正しく把握していないと、期待していた業務を任せられない事態や、制度上の手続きで混乱が生じることがあります。
技能実習と特定技能の制度的な違い
技能実習制度は「技能移転による国際貢献」を目的としており、原則として3年間(最長5年間)の在留が認められます。
一方、特定技能は「人手不足の解消」を目的とした制度。
1号は通算5年間、2号に移行すれば在留期間の上限なく就労を続けられます。
特定技能の介護人材は、入国前に介護技能評価試験と日本語能力試験に合格している必要があり、一定の知識と日本語力を持った状態で現場に入ります。技能実習生は入国後に現場で技能を習得していくため、業務を任せられるまでに時間がかかる傾向があります。
服薬介助の観点から見た特定技能のメリット
服薬介助においては、薬の名前の読み取り、利用者への声かけ、飲み忘れの確認など、日本語でのコミュニケーションが不可欠です。特定技能の人材は日本語能力試験N4以上が要件となっているため、基本的な指示の理解や確認作業に必要な会話力を備えています。
また、介護技能評価試験の出題範囲には服薬介助に関連する介護の基礎知識が含まれており、制度として一定の知識レベルが担保されています。もちろん、試験に合格しているからといってすべてを任せてよいわけではなく、施設ごとの手順やルールを丁寧に教育する必要はあります。
介護現場で誤薬を防ぐための確認体制と教育のポイント

服薬介助で最も避けなければならないのが誤薬です。
利用者の取り違え、薬の種類・量の間違い、服薬タイミングのずれなどが誤薬の主な原因として挙げられます。
外国人介護人材を受け入れる施設では、言語の壁を踏まえた確認体制やマニュアルの整備が不可欠。
万が一の誤薬ゼロを目指すための具体的な取り組みを紹介します。
マニュアル整備とダブルチェック体制の構築
服薬介助を特定技能「介護」服薬介助の手順をマニュアル化し、全スタッフが同じ手順で業務を行えるようにしましょう。マニュアルはやさしい日本語で作成し、写真やイラストを多用すると外国人スタッフにも伝わりやすくなります。
ダブルチェック体制とは、服薬介助を行うスタッフとは別のスタッフがもう一度確認する仕組みです。具体的には「利用者の名前」「薬の種類と数」「服薬の時間帯」の3点を2人で声に出して確認する方法が有効です。
手順の例は次のとおりです。
- 薬のパッケージに記載された利用者名と本人を照合する
- 薬の種類と個数を声に出して読み上げる
- 別のスタッフが同じ内容を確認し、記録に残す
- 服薬後、利用者が薬を飲みこんだことを確認する
日本語理解への配慮と定着支援の重要性
服薬介助に限らず、外国人介護人材が現場で安心して働くためには、日本語理解への継続的な支援が欠かせません。
薬の名前はカタカナ表記が多く、似た名前の薬を混同するリスクがあります。
薬名の一覧表を作成し、読み仮名とともにケアの注意点を添えておくと混乱を防げます。
入職後の教育は、制度上の義務的な研修だけでなく、日常業務のなかでのOJTや定期的な振り返りの場を設けることが大切です。生活面のサポート(住居の確保、行政手続きの支援、相談窓口の設置など)も定着率に直結します。
業務範囲の確認だけでなく、入職後の教育・生活支援・定着支援まで一貫して整えることが、外国人介護人材の受け入れを成功させる鍵です。
特定技能人材の受け入れで介護現場の体制を整えるには
特定技能の介護人材は、日本人の介護職員と同じ業務範囲で働くことができ、服薬介助も条件を満たせば任せられます。
医療行為との境界線を施設全体で正しく理解し、マニュアルの整備やダブルチェック体制を構築することで、誤薬のリスクを最小限に抑えられます。
技能実習生と比べて日本語力と介護知識の基盤がある特定技能人材は、現場の即戦力として期待できる存在と言っても過言ではありません。
受け入れにあたっては業務範囲の確認に加え、教育体制や生活支援の整備まで視野に入れて準備を進めることをおすすめします。
特定技能人材の紹介や登録支援に関するご相談は、特定技能に特化した人材紹介・登録支援機関である医療介護ネットワークにお問い合わせください。