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特定技能「介護」の定着率について|日本人職員との比較と定着促進のポイント

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介護事業所の経営者・採用担当者の皆様の中には、特定技能制度を活用した外国人材の採用を検討する際に、定着率を不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
公表資料では、特定技能「介護」分野の外国人材について、制度開始から2022年11月までの自己都合離職率が10.6%となっております

技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第3回)資料|出入国在留管理庁

一方、介護労働安定センターの令和4年度介護労働実態調査では、日本人を含む介護職員全体の離職率は14.4%でした。
単純な比較対象としてみるには注意が必要なデータですが、外国人材だからといって一律に定着しにくいとは言い切れないのではないでしょうか。
受入れ体制や入職後の支援を適切に整えることで、外国人材が長く働き続ける可能性は十分にあります。

今回は、特定技能介護分野における定着の実態、定着を左右する要因、そして事業所側が取り組むべき施策についてお伝えします。
特定技能介護人材の採用を検討されている事業所様にとって、導入判断の参考になれば幸いです。

特定技能「介護」の定着率・離職率の実態

まずは客観的なデータに基づき、特定技能介護分野の定着率がどの程度の水準にあるのかを確認します。
数字を知ることで、漠然とした不安を具体的な判断材料に変えることができます。

全国平均の離職率は10.6%

最初にお伝えした通り、特定技能「介護」分野における外国人材の自己都合離職率は10.6%となっています
他データにおいては、訪問介護員・介護職員全体の離職率は14.4%でした。

集計期間や定義が異なるため単純比較はできませんが、少なくとも外国人材が一律に定着しにくいとは言い切れないことがうかがえます。

このことから、「外国人材はすぐ辞めてしまうのではないか」という先入観だけで判断するのは適切ではありません。
言語や文化の違いがあっても、受入れ後の支援や職場環境の整備によって、安定して就労を続けてもらえる可能性は十分にあります。

そのため、採用判断においては、定着率そのものを過度に恐れるというより、どうすれば定着しやすい環境をつくれるかに目を向けることが重要です。

地域・事業所による差

ただし、全国平均が10.6%であるからといって、すべての事業所で同じ水準の定着率が実現できるわけではありません。
地域や事業所の規模、受け入れ体制の成熟度によって、定着率には大きな差があります。

例えば、十分な支援体制を整えずに採用に踏み切った事業所では、短期間での離職が発生するケースもあります。
定着率の高い事業所と低い事業所の差は、支援体制や職場環境の違いに起因する部分が大きいと考えられます。

定着率を左右する主要な要因

特定技能介護人材の定着率は、一つの要素で決まるものではなく、複数の要因が複合的に影響します。ここでは、定着率を左右する主要な要因をまとめます。

採用前の情報提供の質

定着率を高める上で最も重要なのが、採用前の情報提供の質です。
仕事内容、勤務条件、職場の文化、日本での生活環境などを、候補者に対して正確かつ丁寧に伝えることが離職防止の第一歩となります。
情報が不十分なまま入職すると、実際の業務内容や生活環境とのギャップから不満が生じ、短期離職につながる可能性が高まります。

特に介護の現場では、身体介護、食事介助、入浴介助、排泄介助といった業務内容を、候補者が正しく理解した上で応募していることが重要です。
実際の業務を映像や写真で見せる、現地で日本語研修の段階から業務内容を詳しく説明するといった工夫が、採用後のミスマッチを防ぐ役割を果たします。

就業後の生活・職場環境への適応支援

採用後の定着を支えるのは、生活面と職場面の両方に対する適応支援です。
住居の確保、行政手続きの支援、日本語学習のサポート、医療機関へのアクセス案内、地域コミュニティとの交流機会の提供など、生活面での支援は外国人材が安心して働き続けるための土台となります。

職場面では、日本人職員との円滑なコミュニケーションを促進する仕組み、やさしい日本語による業務指示の徹底、困ったときに相談できる窓口の設置などが有効です。
文化的な違いを理解し、互いに尊重し合う職場風土を築くことが、長期定着の鍵となります。

登録支援機関との連携

特定技能制度では、受け入れ事業所が自ら支援を行うか、登録支援機関に委託するかを選択できます。
多くの事業所では登録支援機関との連携を通じて、外国人材への支援業務を効率的に実施しております。信頼できる登録支援機関を選ぶことは、定着率を高める上で重要な要素です。

登録支援機関は、定期的な面談、生活相談、日本語学習のサポート、行政手続きの代行など、外国人材と事業所の双方を支える役割を担います。
機関の質によって支援の内容に差があるため、実績や支援体制を確認した上で連携先を選定することが望ましい対応です。

定着率を高めるために事業所が取り組むべき施策

定着率の実態と要因を理解した上で、事業所側が具体的に何をすべきかお伝えします。
以下の3つの施策は、定着率向上に直結する実践的な取り組みです。

やさしい日本語と視覚的なマニュアルの整備

介護の現場では、正確な情報伝達が利用者の安全と職員の安心に直結します。
外国人材が理解しやすいやさしい日本語での指示、視覚的にわかりやすい業務マニュアル、動画教材の活用などは、業務の標準化と教育コストの削減に寄与します。

やさしい日本語とは、難しい表現を避け、短い文で明確に伝える日本語の使い方を指します。
これは外国人材だけでなく、新人の日本人職員や高齢の利用者にとっても理解しやすいという副次的なメリットをもたらします。

日本語学習の継続支援

特定技能1号では日本語能力試験N4レベル相当以上が要件とされておりますが、業務の中でさらなる日本語力の向上を目指すことが長期的な定着につながります。
勤務時間内の日本語学習時間の確保、学習教材の提供、外部講師による研修の実施など、日本語学習を継続的に支援する仕組みを整えることが効果的です。

日本語力の向上は、業務遂行能力の向上と職場でのコミュニケーションの円滑化に直結します。
外国人材自身のキャリア形成にも資するため、モチベーション維持の観点からも重要な取り組みです。

文化理解とメンタルヘルスへの配慮

文化や宗教の違いに配慮した職場運営も欠かせません。
食事制限、宗教的な休日、服装に関する慣習などを理解し、可能な範囲で配慮することが、外国人材が安心して働ける環境の土台となります。異文化理解の研修を日本人職員に対して実施することも、相互理解を深める上で有効です。

また、異国での就労はメンタル面の負担が大きいものです。
定期的な面談で体調や心境を確認し、必要に応じて専門機関への相談を案内する体制を整えておくことが望ましい対応です。
メンタルヘルスへの配慮は、結果的に離職防止と利用者ケアの質向上につながります。

特定技能介護人材の定着率は取り組み次第で大きく変わる

特定技能介護分野における外国人材の離職は適切な受け入れ体制を整えれば高い定着率を実現できることが確認されております。
定着率を左右するのは、採用前の情報提供の質、就業後の生活・職場環境への適応支援、登録支援機関との連携という3つの要素であり、いずれも事業所側の取り組み次第で改善可能です。

やさしい日本語による業務指示、視覚的なマニュアルの整備、日本語学習の継続支援、文化理解とメンタルヘルスへの配慮など、具体的な施策を地道に積み重ねることが長期定着の鍵となります。
人手不足に悩む介護事業所にとって、特定技能制度の活用は有力な選択肢であり、定着率の実態を正しく理解した上で受け入れ体制を整えることが、成功への第一歩です。

特定技能介護人材の受け入れや定着支援について詳しく知りたい方は、医療介護ネットワークにご相談ください。自事業所に合った体制づくりを進めてまいりましょう。