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特定技能外国人の訪問介護はどこまで広がった?解禁から約1年の実態をデータで見る

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介護業界では人手不足が続く中、外国人材の活躍する場が広がっています。
その大きな転換点になったのが、特定技能外国人の訪問介護への従事が解禁されたことです。2025年4月21日から、一定の条件を満たした特定技能外国人は、施設内の介護だけでなく訪問系サービスにも従事できるようになりました。

制度開始から約1年が経過して「外国人ヘルパーは実際に増えているの?」「どのような条件なら訪問介護を任せられる?」と気になっている介護事業者も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、厚生労働省が公表している最新データをもとに、特定技能外国人の訪問介護がどこまで広がっているかを見ていきます。数字を詳しく確認すると、単純に「訪問介護への外国人材の参入が進んでいる」とは言い切れない興味深い実態も見えてきました。

特定技能外国人の訪問介護は2025年4月21日に解禁された

もともと介護分野の特定技能外国人は、介護施設などで介護業務に携わることができました。一方、訪問介護をはじめとする訪問系サービスについては、利用者の自宅で介護職員と利用者が1対1になるケースが多いことなどから、特定技能外国人の従事は認められませんでした。

しかし、訪問介護職員の深刻な人手不足などを背景に制度が見直されます。
厚生労働省の検討会で議論が行われ、2024年6月中間まとめなどを経て、2025年4月21日から特定技能外国人も一定の条件のもとで訪問系サービスに従事できるようになりました。

つまり、誰でもすぐに外国人ヘルパーとして利用者宅を訪問できる制度になったわけではありません。むしろ、施設介護とは異なる訪問介護特有のリスクを考慮し、複数の条件が設けられている点が重要です。

特定技能外国人が訪問介護をするための条件

では、特定技能外国人を訪問介護に配置するには、どのような条件を満たす必要があるのでしょうか。

まず外国人本人については、介護職員初任者研修課程等を修了し、原則として介護事業所等で1年以上の実務経験を有していることが求められます。
さらに受入事業所にも、次のような対応が求められます。

訪問介護に必要な研修を実施する

施設内の介護と利用者宅で行う介護では、求められる対応が異なります。そのため事業所は、訪問系サービスの基本事項や生活支援技術だけでなく、利用者。家族とのコミュニケーション、日本の生活様式、緊急時の対応などについて研修を行わなければなりません。

特に「日本の生活様式」が研修内容に含まれている点は、訪問介護ならではといえるでしょう。利用者宅では、掃除、洗濯、調理、買い物など、施設介護以上に日常生活に密着した支援が必要になりためです。

サービス提供責任者などによる同行・OJTを行う

研修が終われば、すぐに1人で訪問できるわけでもありません。
特定技能外国人が1人で適切にサービスを提供できると判断されるまで、サービス提供責任者などが一定期間同行し、必要なOJTを行うことが求められています。

訪問先ごとに利用者の状態や生活環境は異なります。
そのため「何ヶ月同行すれば一律に終了」という考え方ではなく、本人の介護技術やコミュニケーション能力などを確認しながら判断することが重要になります。

キャリアアップ計画の作成も必要

外国人本人に業務内容を説明し、本人の意向を確認したうえでキャリアアップ計画を作成することも条件の一つです。

計画には、担当する業務や将来のキャリア目標、事業所が行う支援などを盛り込みます。さらに現在は、適合確認書の発行を受けた外国人についてキャリアアップ計画を作成し、評価期間終了後には定期報告を行う仕組みも設けられています。

単に人手不足を補うために配置するのではなく、外国人本人の育成まで考えた運用が求められているわけです。

ハラスメント対策や緊急時の体制も整える

訪問介護では職員が利用者宅で1人になるため、ハラスメントなどの問題が起きても周囲の職員がすぐに気づけない可能性があります。そのため、相談窓口の設置などのハラスメント対策も必要です。

また、急な体調変化や事故などが起きた際に備え、ICTなどを活用して事業所とすぐに連絡できる環境を整えることも求められます。

解禁から約10ヶ月で特定技能外国人964人に適合確認書

では制度開始後、実際にどれくらい利用されているのでしょうか。

厚生労働省が公表した2026年3月の資料によると、2025年4月21日から2026年2月28日までに訪問系サービスへの従事について適合確認書が発行された特定技能外国人は964人でした。受入機関は300、事業所数では441事業所となっています。

制度開始から約10ヶ月で約1,000人という数字だけを見ると、特定技能外国人の訪問介護が少しずつ広がっているようにも見えます。
しかし、訪問先の内訳を見ると状況は少し違います。

約8割は「有料老人ホーム・サ高住」での訪問だった

今回のデータで特に注目したいのが、特定技能外国人がどこを訪問しているのかです。
964人の訪問先を厚生労働省の資料で見ると、次のようになっています。

  • 有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅内:769人(79.8%)
  • 有料老人ホーム・サ高住と地域の利用者宅の両方:73人(7.6%)
  • 地域の利用者宅への訪問:66人(6.8%)
  • 有料老人ホーム・サ高住だが将来的に地域へ訪問する可能性あり:8人(0.8%)
  • その他:48人(5.0%)

つまり、適合確認を受けた特定技能外国人の約8割は、有料老人ホームやサ高住の建物内で訪問系サービスに従事していることになります。一方、地域にある一般の利用者宅のみを訪問している外国人は66人で、全体の6.8%です。

「訪問が解禁された」と聞くと、外国人ヘルパーが地域の家庭を1軒ずつ訪問している姿を想像するかもしれません。しかし少なくとも2026年2月末時点のデータでは、解禁後の第一段階として比較的職員間で連携しやすい有料老人ホームやサ高住から活用が進んでいることが分かります。ここは、制度の解説だけでは見えてこないポイントです。

なぜ地域の利用者宅への訪問はまだ少ないのか

地域の利用者宅への訪問がまだ限定的なのは、外国人材だからという理由だけではありません。訪問介護そのものが、施設介護とは異なる難しさを持つ仕事だからです。

利用者宅では基本的に1人で対応するため、その場で状況を判断する力が求められます。さらに、利用者や家族との会話だけでなく、掃除や調理方法、物の扱い方など、それぞれの家庭の生活環境にも合わせなければなりません。

2026年9月の報道でも、外国人訪問介護ヘルパーの受入れは訪問介護事業所全体の1.2%にとどまるとされ、生活文化の違いや1対1でサービスを行う難しさなどが紹介されています。

ただし、これは「外国人には訪問介護が難しい」という意味ではありません。
適切な研修や同行支援を行い、本人の経験に合わせて訪問先を広げていくことが重要だということです。

特定技能の訪問先は「解禁されたか」から「どう育てるか」の段階へ

特定技能外国人の訪問介護が解禁されたことで、介護事業者にとって人材確保の選択肢は確実に広がりました。一方で最新データを見る限り、地域の利用者宅を1人で訪問する働き方が全国的に定着したとまではいえません。

現在は、有料老人ホームやサ高住など比較的サポートしやすい環境から経験を積み、徐々に活躍の場を広げていく段階にあると考えられます。

今後、受入れを検討する事業所にとって重要なのは、単に「特定技能外国人を訪問介護に配置できるか」を確認するだけではないでしょう。研修や同行OJT、緊急時の連絡体制、日本の生活文化についての教育、そして本人のキャリア形成まで含め、1人で安心して利用者宅を訪問できる人材をどう育てるかが大きなポイントになります。

制度開始から約1年。
特定技能外国人の訪問介護は「解禁された」というニュースの段階を超え、これからは実際の介護現場でどのように定着させていくのかが問われるフェーズに入りつつあります。

医療介護ネットワーク株式会社では事業所のニーズに合わせた特定技能外国人のご紹介が可能です。
人手不足にお悩みの事業者様や、外国人採用を考えている施設担当者様はぜひ一度ご相談ください。