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介護現場では、人材確保の難しさが年々大きな課題になっています。求人を出しても応募が集まりにくい、採用できても定着に悩むなど、人手不足に頭を抱えている施設や法人も多いのではないでしょうか。
こうしたなかで、外国人材の採用に目を向ける施設が増えています。なかでも近年、注目されているのがミャンマー人材です。ミャンマー人には、高齢者を敬う文化や日本で働く意欲の高さなど、介護現場と相性がよいとされる傾向があります。
この記事では、ミャンマー人が介護人材として注目される背景や、介護職に向いているといわれる理由、採用時に押さえておきたい注意点を分かりやすく解説します。
介護職でミャンマー人が注目される背景

まずは、介護分野でミャンマー人材への関心が高まっている理由を、制度面や社会情勢も含めて整理していきます。
介護業界の深刻な人手不足
日本の介護業界は、高齢化の進行に対して働き手の確保が追いついていません。
厚生労働省が第9期介護保険事業計画をもとにまとめた推計では、介護職員は2026年度に約240万人、2040年度には約272万人が必要になるとされています。これは2022年度の約215万人と比べて、2040年度までに約57万人を増やさなければならない計算です。一方で実際の職員数の伸びは緩やかで、必要なペースに届いていないのが実情です。
人手不足は単に求人を出せば解決する問題ではありません。少子高齢化によって生産年齢人口そのものが縮小しているため、国内での人材の取り合いが激しくなっています。賃金や働きやすさの改善に取り組んでも、応募が集まりにくい地域や施設は少なくありません。こうした状況のなかで、国内人材の確保と並行して外国人材に目を向ける施設が増えているのです。
外国人材の受け入れ制度の広がり
外国人が日本で介護職に就くための制度は複数あり、現在は主に「EPA(経済連携協定)」「在留資格『介護』」「技能実習」「特定技能」という枠組みで雇用されています。それぞれ目的や要件が異なり、施設の状況に合わせて選ぶ形になります。なかでも人手不足を補うことを目的とした特定技能制度は、介護分野で幅広く活用されるようになりました。
さらに制度は大きな転換期を迎えています。政府は技能実習制度を段階的に廃止し、人材育成と確保を主眼に置いた「育成就労制度」を2027年4月から施行することを決めました。育成期間は原則3年で、修了後は特定技能1号への移行が想定されています。施行後はおおむね2030年頃まで技能実習と育成就労が併存する移行期間が設けられる予定です。制度の見直しが進むことで、外国人材を中長期的に受け入れ、育てていく流れがいっそう明確になっています。
ミャンマーが送り出し国として選ばれる理由
外国人材の送り出し国はベトナムやインドネシア、フィリピンなど複数ありますが、近年ミャンマーの存在感が高まっています。背景の一つに、2021年のミャンマー国内の政情変化があり、国外で働くことを希望する人が増えたことが挙げられます。在留するミャンマー人は近年大きく増加しており、特定技能で在留するミャンマー人は2023年6月末の8,016人から2024年6月末には19,058人へと、1年間で1万人以上増えました。
また、ミャンマーは仏教の信仰が根付いた国で、年長者を敬い、困っている人を助けることを大切にする価値観が社会に広く共有されています。こうした文化的な土壌が介護という仕事と結びつきやすいと考えられていることも、送り出し国として選ばれる理由になっています。
ただし、こうした傾向はあくまで全体的なものであり、人材によって個人差があります。国籍だけで適性を判断するのではなく、一人ひとりの経験や日本語力、介護への意欲を丁寧に確認することが大切です。
ミャンマー人に見られる特徴と介護職との相性

ミャンマー人には、年長者を敬う考え方や、周囲との助け合いを大切にする傾向があるといわれています。
ここでは、介護現場で理解しておきたいミャンマー人の特徴を整理します。
仏教文化が生活に根付いている
ミャンマーでは仏教を信仰する人が多く、日常生活にも仏教の考え方が深く関わっています。年長者を敬うこと、人のために行動すること、善い行いを大切にすることなどは、ミャンマー社会のなかで広く見られる価値観です。
介護の仕事では、利用者に対して丁寧に接する姿勢や、相手を尊重する気持ちが求められます。高齢者を大切にする文化的な背景があることは、介護職への理解や利用者との関わり方に良い影響を与える可能性があります。
思いやりや助け合いを大切にする
ミャンマーでは、寄付をはじめとした奉仕活動が日常に根付いており、人のために行動することを大切にする考え方があります。困っている人を見かけたときに手を差し伸べたり、周囲と助け合ったりする姿勢は、ミャンマー人の思いやりや協調性を感じられる特徴の一つです。
介護現場では、利用者の小さな変化に気づくことや、同僚と協力しながらケアを行うことが求められます。思いやりや助け合いを重視する価値観は、利用者への声かけや日々のサポートにもつながりやすい部分です。
家族や人とのつながりを大切にする
ミャンマーでは、家族との結びつきを大切にする傾向があります。親を敬う考え方が根付いており、進学や就職などの大きな決断に家族の意見が影響することもあります。
また、家族だけでなく、友人や職場の仲間とのつながりを大切にする人もいます。介護施設で働く際も、職場の人間関係に安心感を持てるかどうかは、定着に関わる重要なポイントです。受け入れ側としては、孤立させず、相談しやすい関係づくりを意識することが大切です。
日本に親しみを持っている人が多い
ミャンマーでは、日本製品への信頼や日本で働くことへの憧れなどから、日本に良い印象を持つ人も多いとされています。
介護職として来日する人のなかには、日本語を学びながら、日本の職場で経験を積みたいという意欲を持つ人もいます。こうした前向きな姿勢は、介護現場での成長や定着にもつながる可能性があります。
ミャンマー人の働き方の傾向

ミャンマー人は、真面目に仕事へ取り組む姿勢や、職場の人間関係を大切にする傾向があるとされています。
ここでは、ミャンマー人を介護職として受け入れる際に知っておきたい仕事観や、現場での関わり方について整理します。
家族を支えるために働く意識がある
日本で働くミャンマー人のなかには、母国の家族へ仕送りをしたい、家族の生活を支えたいという目的を持って来日する人もいます。経済的に安定した収入を得ることは、本人だけでなく家族にとっても大きな意味を持つ場合があります。
こうした目的意識がある人は、仕事に対して責任感を持ちやすく、長く働きたいという意欲につながることもあります。ただし、家族への思いが強い分、母国の事情や家族の都合によって休暇や帰国の希望が出ることもあるため、事前に働き方や休暇のルールを丁寧に共有しておくことが大切です。
勤勉で真面目に働く姿勢が期待される
ミャンマー人は、仕事に真面目に向き合い、周囲と協力しながら丁寧に業務を覚えようとする人が多いとされています。任された仕事を丁寧にこなそうとする姿勢や、周囲に迷惑をかけないように行動しようとする意識は、介護現場でも強みになります。
介護の仕事では、食事介助、排泄介助、移乗介助、記録業務など、一つひとつの業務を正確に行うことが求められます。真面目に学び続ける姿勢がある人材は、現場のルールを理解しながら着実に成長していきやすいでしょう。
チームで働く環境に向いている
ミャンマー人は、人とのつながりや周囲との調和を大切にする傾向があるといわれます。介護現場では、利用者の状態を職員同士で共有し、チームで支援していく場面が多いため、協調性は重要な要素です。
一人で黙々と作業するよりも、職員同士で声をかけ合いながら働く環境のほうが、安心して力を発揮しやすい人もいます。受け入れ後は、教育担当者や相談役を決めておくと、職場に早くなじみやすくなるでしょう。
本音を言いにくい場合がある
ミャンマー人のなかには、相手への配慮から本音をすぐに言わない人もいます。分からないことがあっても「大丈夫です」と答えたり、不安や不満を抱えていても表に出さなかったりする場合があります。
介護現場では、分からないことや不安を抱えたまま業務を続けると、本人のストレスが蓄積したり、必要な情報が共有されずに業務へ影響したりする可能性があります。そのため、受け入れ側は日頃からこまめに声をかけ、相談しやすい雰囲気をつくることが大切です。定期的に面談の場を設けるなど、本人が安心して気持ちを伝えられる環境を整えましょう。
上下関係や礼節を重んじる傾向がある
ミャンマーでは、親や年長者を敬う考え方が大切にされており、目上の人に対して丁寧に接する傾向があるといわれています。穏やかな人間関係を重視する人も多く、強い口調で注意されたり、人前で叱責されたりすることに慣れていない場合もあります。
そのため、仕事上のミスやトラブルが起きた際に厳しく叱責すると、必要以上に落ち込んだり、萎縮してしまったりする可能性があります。
指導する際は、全員の前で叱るのではなく、個別に落ち着いた場で伝えることが大切です。感情的に責めるのではなく、何が問題だったのか、次にどう改善すればよいのかを丁寧に説明することで、本人も前向きに受け止めやすくなります。
介護職でミャンマー人を採用する際の注意点

ミャンマー人を採用する際は、特徴を理解するだけでなく、採用後に安心して働ける環境を整えることが大切です。
真面目さや協調性などが期待される一方で、言葉や生活習慣、文化の違いに戸惑う場面もあります。施設側のサポートが不十分だと、せっかく採用しても早期離職やミスマッチにつながる可能性があります。
長く活躍してもらうためには、日本語のフォロー、生活面の支援、文化や宗教への配慮、現場職員の理解づくりが欠かせません。ここからは、ミャンマー人を受け入れる際に意識したいポイントを見ていきます。
日本語教育と継続的なフォロー体制
来日時に一定の日本語力を備えていても、介護現場で必要とされる言葉のレベルはそれだけでは十分とは限りません。介護記録の記入、医療や介護の専門用語、利用者やその家族との細やかなやりとりなど、実務では高度な日本語が求められる場面が数多くあります。来日後も学習を続けられる環境を施設側が用意することが欠かせません。
具体的には、業務に関連する日本語を学ぶ機会を設けたり、わからない言葉を気軽に質問できる雰囲気をつくったりする工夫が効果的です。指導役の職員を決めて定期的に振り返りを行うなど、継続的にフォローする仕組みがあると安心して成長できます。日本語の壁を本人だけの努力に任せるのではなく、施設全体で支える姿勢が定着につながります。
生活支援と文化・宗教への配慮
外国人材にとって、仕事だけでなく日本での生活そのものが大きな挑戦です。住まいの確保や行政手続き、銀行口座の開設、買い物や交通機関の使い方など、慣れない環境での生活には多くのサポートが必要になります。生活面の不安が大きいと仕事にも影響が出るため、住環境の準備や生活相談の窓口を整えておくことが望まれます。
加えて、文化や宗教への配慮も重要です。ミャンマーは仏教徒が多い国ですが、信仰や生活習慣には個人差があります。食事の好みや宗教上の慣習、祝祭日の考え方などを一方的に決めつけず、本人と対話しながら無理のない範囲で配慮する姿勢が求められます。違いを尊重し合える関係を築くことが、安心して働ける職場づくりの基礎になります。
現場職員の理解と定着に向けた支援
外国人材の受け入れを成功させるには、一緒に働く現場職員の理解が不可欠です。言葉や文化の違いから生じるすれ違いに対して、職員の側にも歩み寄る意識がないと、お互いにストレスを抱えてしまいます。受け入れの目的や背景を職員に丁寧に共有し、どう接すればよいかを事前に話し合っておくことで、現場の混乱を防げます。
定着に向けては、本人が孤立しないように相談できる相手をつくることや、頑張りを正当に評価して伝えることも効果的です。特定技能は同じ職種であれば転職が可能な制度のため、働きにくさを感じれば離職につながります。受け入れて終わりではなく、長く活躍してもらうための支援を続ける姿勢が、結果として施設の人材確保を安定させます。受け入れ体制の整備は、外国人材本人のためであると同時に、施設経営を支える投資でもあるのです。
ミャンマー人材の力を活かすために受け入れ体制を整えよう
介護分野でミャンマー人が注目される背景には、介護業界の人手不足と、特定技能をはじめとする外国人材受け入れ制度の広がりがあります。高齢者を敬う文化や日本で働く意欲、真面目さなどが介護職と親和性があると語られることもありますが、国籍だけで性格や適性を判断することはできません。採用時には、本人の経験、日本語力、介護への意欲を丁寧に確認することが大切です。
また、採用後は日本語学習の支援、生活面のフォロー、文化や宗教への配慮、現場職員の理解づくりなど、安心して働ける環境を整える必要があります。特定技能で受け入れる場合は、支援計画の作成や定期面談など制度上の対応も欠かせません。
外国人材の受け入れには専門的な手続きも多いため、自施設だけで進めるのが不安な場合は、登録支援機関などの専門機関に相談しながら、採用から定着までを見据えて準備を進めましょう。