
介護業界では人手不足が深刻な状況が続いており、外国人介護人材の採用を検討する施設・事業所が増えています。
その中でも活用が進んでいるのが、在留資格「特定技能1号」の介護分野、いわゆる「特定技能(介護)ビザ」です。
ただし、特定技能(介護)ビザは、人材を紹介してもらえばすぐに働ける制度ではありません。外国人本人の技能・日本語要件だけでなく、受入機関側の雇用条件、支援計画、介護分野における特定技能協議会への加入、在留資格申請書類の整備など、申請前に確認すべきポイントが多くあります。
介護分野の特定技能では、在留諸申請の前に協議会の構成員となり、受入事業所情報が登録された入会証明書の発行を受ける必要があります。
さらに、2025年4月からは一定の条件を満たす場合に、特定技能外国人が訪問介護等の訪問系サービスに従事できるようになりました。
一方で、訪問介護に従事させる場合は、通常の特定技能ビザ申請に加えて、研修、同行訓練、ハラスメント防止措置、緊急時対応体制、適合確認書の取得など、追加で確認すべき事項があります。
また、介護分野には「特定技能2号」はありません。
長期雇用を見据える場合は、特定技能2号への移行ではなく、介護福祉士国家資格を取得したうえで在留資格「介護」へ変更するルートが基本です。
この記事では、特定技能(介護)ビザを申請する前に確認すべき要件、申請手順、費用の目安、訪問介護での注意点、技能実習との違いを、介護事業者向けにわかりやすく解説します。
特定技能(介護)ビザ申請で最初に確認すべき3つの条件

1. 外国人本人が要件を満たしているか
まず確認すべきなのは、外国人本人が特定技能1号「介護」の要件を満たしているかです。
試験合格者なのか、技能実習2号からの移行者なのか、介護福祉士養成施設修了者なのかによって、必要書類が変わります。
特に技能実習から特定技能へ移行する場合は、技能実習2号を良好に修了しているか、修了証明や評価調書などで確認できるかが重要です。技能実習2号を良好に修了している場合、日本語試験は原則免除され、従事予定業務との関連性が認められる場合は技能試験も免除されます。
2. 受入機関の雇用条件が基準を満たしているか
特定技能外国人の報酬は、日本人と同等以上である必要があります。
賃金規定がある場合はその規定に基づき、同等業務に従事する日本人職員がいる場合は、その職員との比較で報酬の同等性が判断されます。
また、特定技能外国人はフルタイムで業務に従事することが求められるため、複数の事業所や複数企業で掛け持ち就労することはできません。
雇用契約書、労働条件通知書、給与規程、シフト、職務内容の整合性が取れていないと、申請時に説明を求められる可能性があります。
3. 受入事業所が介護分野の対象施設に該当するか
介護分野で特定技能外国人を受け入れる場合、受入事業所は介護等の業務を行う対象施設に該当している必要があります。
厚生労働省は、介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる事業所について、対象施設に該当する必要があると案内しています。
また、介護分野では受入れ人数にも注意が必要です。
出入国在留管理庁のQ&Aでは、介護分野について、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数を上限とするルールが示されています。
特定技能(介護)ビザ申請の流れ

特定技能(介護)ビザの申請は、海外から呼び寄せる場合と、国内在住者を採用する場合で手続きが異なります。大まかな流れは次のとおりです。
ステップ1:採用する人材の要件確認
まず、採用予定者が特定技能1号「介護」の対象者か確認します。試験合格者なのか、技能実習2号修了者なのか、国内在住者なのか、海外在住者なのかによって、必要な書類と申請スケジュールが変わります。
この段階で、パスポート、在留カード、試験合格証明、技能実習の修了状況、職歴、介護経験、日本語能力などを確認しておくことが重要です。
ステップ2:雇用契約を締結する
次に、特定技能雇用契約を締結します。報酬は日本人と同等以上である必要があり、業務内容、勤務時間、休日、給与、手当、社会保険、退職時の取扱いなどを明確にします。
雇用契約書の内容と、在留資格申請書、支援計画、事業所の実態が一致していないと、申請時に追加説明や修正が必要になることがあります。
ステップ3:1号特定技能外国人支援計画を作成する
特定技能1号の外国人を受け入れる場合、受入機関は支援計画を作成し、生活面・就労面の支援を行う必要があります。
支援には、事前ガイダンス、住居確保、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談対応、定期面談などが含まれます。
支援を自社で実施できない場合は、登録支援機関に全部または一部を委託できます。ただし、委託しても受入機関としての責任がなくなるわけではありません。
ステップ4:介護分野における特定技能協議会へ加入する
介護分野では、在留資格申請の前に「介護分野における特定技能協議会」の構成員となり、受入事業所情報が登録された入会証明書の発行を受ける必要があります。
この運用は、2024年6月15日以降の地方出入国在留管理局への在留諸申請から適用されています。
協議会への入会申請後、確認が完了すると通常2週間程度で入会証明書が発行されます。入会費・年会費等は徴収されません。入会証明書には有効期間があるため、更新時期にも注意が必要です。
ステップ5:地域共生施策への対応を確認する
2025年4月1日以降、特定技能所属機関は、特定技能外国人が活動する事業所所在地および住居地が属する市区町村へ「協力確認書」を提出する必要があります。
また、地方公共団体の共生施策を確認し、それを踏まえた支援計画を作成・実施することも求められています。
ビザ申請時には、単に雇用契約や支援計画を作るだけでなく、地域での生活支援や行政との連携まで見据えた準備が必要です。
ステップ6:在留資格申請を行う
海外から呼び寄せる場合は、地方出入国在留管理局に「在留資格認定証明書交付申請」を行います。
在留資格認定証明書は、外国人が日本で行う活動が在留資格に該当することなどを入国前に証明するための申請で、交付後は在外公館での査証申請、入国手続きへ進みます。
手数料はかかりません。標準処理期間は1か月から3か月です。
国内在住者を採用する場合は、「在留資格変更許可申請」を行います。
変更申請の手数料は、許可時に6,000円、オンライン申請の場合は5,500円です。
標準処理期間は1か月から2か月とされています。
ステップ7:就労開始後の届出・面談を行う
許可後も、受入機関には届出や支援の義務があります。
2025年4月1日以降、定期届出は四半期ごとではなく、年1回に変更されています。
対象年の4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況を、翌年4月1日から5月31日までに提出します。
ただし、定期面談は従来どおり3か月に1回以上行う必要があります。
また、介護分野では、受け入れた日から4か月以内に協議会申請システムへ外国人情報を登録する必要があります。
ビザ申請で特に注意すべきポイント

注意点1:介護分野に「特定技能2号」はない
介護分野では、特定技能1号から特定技能2号へ移行することはできません。
出入国在留管理庁は、特定技能2号の対象分野について、介護分野などを除く11分野としています。
長期的に働いてもらいたい場合は、介護福祉士国家資格を取得し、在留資格「介護」へ変更するルートを設計する必要があります。
在留資格「介護」は、介護福祉士の資格を有する者が、介護または介護の指導を行う業務に従事する活動を対象としており、在留期間は5年、3年、1年または3月です。
なお、2026年からは、介護福祉士国家試験のパート合格制度に関連して、一定要件を満たす特定技能1号外国人について通算在留期間の延長措置が設けられています。
5年満了が近い人材については、国家試験の受験状況と延長措置の対象になるかを早めに確認することが重要です。
注意点2:協議会入会を後回しにしない
介護分野では、在留諸申請の前に協議会入会証明書が必要です。
採用が決まってから急いで申請すると、ビザ申請全体のスケジュールが遅れる可能性があります。
特に複数事業所で受け入れる場合や、既に就労中の外国人を別事業所へ異動させる場合は、その事業所情報が入会証明書に登録されているかを確認してください。
登録のない事業所で受け入れる場合は、事前に事業所情報を申請し、入会証明書の発行を受ける必要があります。
注意点3:訪問介護に従事させる場合は追加手続きが必要
2025年4月21日から、特定技能外国人は一定の条件のもとで訪問介護等の訪問系サービスに従事できるようになりました。
条件として、介護職員初任者研修課程等の修了、介護事業所等での実務経験、受入事業所による遵守事項の履行などが求められます。
実務経験は原則1年以上とされています。
訪問介護に従事させる場合は、外国人ごとに適合確認申請を行い、適合確認書の発行を受ける必要があります。
適合確認書の発行を受けていない特定技能外国人は、同行訪問を含め、訪問系サービスに従事できません。
提出書類には、訪問系サービスの要件に係る報告書、キャリアアップ計画、ハラスメント対応マニュアル、緊急時対応フローなどが含まれます。
書類の内容が実態に即していない場合や、挙証書類との整合性が取れていない場合は差し戻しの可能性があります。
注意点4:技能実習からの移行でも、許可前に働かせてはいけない
技能実習2号を終えた外国人を特定技能として採用する場合でも、在留資格変更許可を受けるまでは特定技能として働くことはできません。
出入国在留管理庁は、技能実習2号修了後、特定技能への変更許可を受けるまでの間は働くことができないため、早めの準備が必要だと案内しています。
人材確保の観点からは、技能実習修了直前に慌てて申請するのではなく、修了時期、在留期限、必要書類、協議会入会証明書の有効性を逆算して準備することが重要です。
注意点5:雇用条件の説明不足は不許可・トラブルの原因になる
特定技能外国人の報酬は日本人と同等以上である必要があります。
給与額だけでなく、手当、賞与、夜勤、残業、処遇改善加算の取扱いなども、雇用契約書や説明資料で明確にしておくべきです。
また、外国人本人が十分に理解できる言語で労働条件や支援内容を説明することも重要です。
説明不足のまま入職すると、入職後の認識違い、早期離職、転職リスクにつながります。
注意点6:定期届出は年1回、定期面談は3か月に1回以上
古い情報では「四半期ごとの定期届出」と説明されていることがありますが、2025年4月1日以降、定期届出は年1回に変更されています。
一方で、定期面談は従来どおり3か月に1回以上必要です。
記事や社内マニュアルを作成する場合は、「四半期ごとの定期届出」と書かないよう注意してください。
注意点7:海外採用では入国までのスケジュールを長めに見る
海外から呼び寄せる場合は、在留資格認定証明書交付申請、在外公館での査証申請、渡航、住居準備、入職前研修などが必要です。
在留資格認定証明書交付申請の標準処理期間は1か月から3か月とされていますが、書類の不備や追加資料の提出があるとさらに時間がかかる可能性があります。
入職予定日を先に決めるのではなく、申請期間、渡航準備、生活立ち上げ、日本語研修、現場OJTまで含めてスケジュールを設計しましょう。
特定技能(介護)ビザ申請にかかる費用の目安
特定技能(介護)ビザの受け入れ費用は、採用経路、国内採用か海外採用か、登録支援機関を利用するか、自社支援を行うかによって大きく変わります。主な費用項目は次のとおりです。
| 費用項目 | 目安・考え方 | 注意点 |
|---|---|---|
| 在留資格認定証明書交付申請 | 手数料なし | 海外から呼び寄せる場合に行う申請。標準処理期間は1〜3か月。 |
| 在留資格変更許可申請 | 許可時6,000円、オンライン申請は5,500円 | 国内在住者を特定技能へ変更する場合。 |
| 在留期間更新許可申請 | 許可時6,000円、オンライン申請は5,500円 | 更新申請は在留期限前に実施。標準処理期間は2週間〜1か月。 |
| 協議会入会費・年会費 | なし | 介護分野における特定技能協議会では、入会費・年会費等は徴収されません。 |
| 登録支援機関への委託費 | 月額2万〜4万円前後が一つの目安 | 出入国在留管理庁資料では、支援委託料の月額平均は28,386円、3万円以下が約90%とされています。 |
| 人材紹介手数料 | 紹介会社・採用国・採用経路により変動 | 返金規定、早期退職時の取扱い、紹介料に含まれる業務範囲を確認する。 |
| 渡航費・住居初期費用 | 海外採用では発生しやすい | 誰がどこまで負担するかを契約前に明確化する。 |
| 日本語教育・介護研修費 | 施設の教育体制により変動 | 訪問介護に従事させる場合は、訪問介護業務の研修・同行訓練・緊急時対応訓練も見込む。 |
費用を抑えるには、国内在住者や技能実習からの移行者を採用する、自社で実施できる支援と外部委託する支援を切り分ける、複数の紹介会社・登録支援機関から見積もりを取る、訪問介護に従事させる場合は追加研修や適合確認の準備を早めに行うことが重要です。
技能実習との違い|ビザ申請上の注意点
特定技能と技能実習は、どちらも外国人介護人材の受け入れ制度として利用されますが、制度の目的が異なります。
特定技能は、人手不足分野で一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度です。
一方、技能実習制度は、技能・技術・知識の開発途上国等への移転を図り、人づくりに協力することを目的としています。
| 比較項目 | 特定技能1号(介護) | 技能実習(介護) |
|---|---|---|
| 制度の目的 | 人手不足分野での即戦力人材の受け入れ | 技能移転による国際協力 |
| 在留期間 | 原則通算5年 | 最長5年 |
| 転職・転籍 | 同一分野内で転職可能。ただし在留資格変更許可申請が必要 | 原則として制約が強い |
| 日本語・技能要件 | 介護技能評価試験、介護日本語評価試験、日本語試験等 | 介護職種では日本語要件あり |
| 訪問介護への従事 | 2025年4月21日から条件付きで可能 | 2025年4月1日から条件付きで可能 |
| 長期就労のルート | 介護福祉士取得後、在留資格「介護」へ変更 | 技能実習後に特定技能へ移行するケースあり |
訪問介護については、以前は技能実習生・特定技能外国人とも従事できないと説明されることが多くありましたが、2025年4月以降は一定条件のもとで従事が認められています。
施行日は、技能実習が2025年4月1日、特定技能が2025年4月21日です。
また、技能実習制度は今後、育成就労制度へ移行していきます。
厚生労働省は、技能実習制度を発展的に解消し、育成就労制度を2027年4月から施行すると案内しています。2026年時点で採用計画を立てる場合は、技能実習から特定技能への移行だけでなく、将来的な育成就労制度の動向も確認しておく必要があります。
特定技能(介護)ビザ申請を成功させるためのチェックリスト
申請前に、次の項目を確認しておきましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|---|---|
| 外国人本人の要件 | 試験合格、技能実習2号良好修了、介護福祉士養成施設修了などの確認 |
| 在留期限 | 国内在住者の場合、在留期限までに変更申請を行えるか |
| 雇用契約 | 日本人と同等以上の報酬、フルタイム雇用、業務内容の明確化 |
| 受入事業所 | 介護分野の対象施設に該当するか |
| 受入人数 | 事業所単位で常勤介護職員総数の範囲内か |
| 協議会 | 申請前に入会証明書を取得しているか |
| 支援計画 | 10項目の義務的支援を実施できる体制があるか |
| 登録支援機関 | 委託範囲、費用、対応言語、緊急時対応を確認したか |
| 協力確認書 | 事業所所在地・住居地の市区町村への提出を確認したか |
| 訪問介護 | 初任者研修、実務経験、研修、同行訓練、適合確認書を確認したか |
| 届出体制 | 年1回の定期届出、3か月に1回以上の定期面談、随時届出に対応できるか |
まとめ|特定技能(介護)ビザは「申請前の準備」で成否が決まる

特定技能(介護)ビザは、介護分野の人手不足に対応するための有力な制度です。
一定の介護技能と日本語能力を持つ外国人材を採用でき、2025年4月からは条件付きで訪問介護等にも従事できるようになりました。
一方で、ビザ申請では、外国人本人の要件だけでなく、受入機関の雇用条件、支援計画、協議会入会、協力確認書、訪問介護の適合確認、届出体制まで確認されます。
制度を正しく理解しないまま採用を進めると、申請の遅れ、追加資料の提出、入職時期のズレ、想定外の費用、入職後のトラブルにつながる可能性があります。
特に重要なのは、介護分野に特定技能2号はないこと、長期雇用には在留資格「介護」への変更ルートを見据えること、訪問介護では外国人ごとの適合確認書が必要になることです。
特定技能(介護)ビザを活用して外国人介護人材を採用する場合は、採用前の段階で、ビザ申請、雇用契約、支援体制、費用、将来のキャリアパスまで一体で設計することが大切です。
特定技能人材の紹介や登録支援に関するご相談は、一度医療介護ネットワークにお問い合わせください。