
物流業界は、2024年4月に施行された働き方改革関連法の適用によって大きな転換期を迎えています。
トラックドライバーの時間外労働に上限規制がかかり、人手不足が一段と深刻化しました。
この状況を受けて、特定技能制度を活用した外国人材の受け入れが急速に注目されています。
2024年3月の閣議決定では、特定技能の対象分野に「自動車運送業」が新たに追加されました。
さらに2025年には「物流倉庫」分野の新設も検討されるなど、物流分野での外国人材の活用は制度面からも加速しています。
この記事では、物流改正法の影響と特定技能制度の最新動向を整理したうえで、外国人材を受け入れるための具体的な条件や手続き、現場運営への影響について解説します。
物流業界が直面する人手不足と2024年問題
日本の物流業界は長年にわたり慢性的な人手不足を抱えてきました。
EC市場の拡大による取扱物量の増加に対し、ドライバーの高齢化と新規参入の減少が重なり、需給のギャップは年々広がっています。
2024年4月の法改正は、この構造的な課題に拍車をかける形となりました。
ここでは、いわゆる「2024年問題」の本質と、外国人材の活用が求められるようになった背景を整理します。
物流2024年問題で何が変わったのか
2024年4月1日から、トラックドライバーに対して時間外労働の上限規制が本格適用されました。
年間の時間外労働は960時間が上限となり、これまで適用が猶予されていた物流業界にも働き方改革のルールが及んだ形です。
この規制によって、1人のドライバーが1日に運べる荷物の量は確実に減ります。
国土交通省の試算では、2024年度に約14%の輸送力が不足すると見込まれていました。
長距離輸送の分割やリレー方式への転換が進められていますが、現場レベルでの対応には限界があります。
ドライバーの労働時間が短縮されれば、当然ながら収入にも影響が及びます。
給与水準の低下は離職率の上昇を招き、人材確保がさらに困難になるという悪循環に陥りかねません。物流業界が抱える構造的な問題は、法改正によって一気に表面化しました。
外国人材の活用が求められる背景
国内の労働力人口が減少するなか、外国人材の受け入れは物流業界にとって現実的な選択肢のひとつになっています。
すでに製造業や介護分野では特定技能制度を活用した外国人材の雇用が進んでおり、物流分野への拡大は時間の問題とみられていました。
2024年3月の閣議決定で自動車運送業が特定技能の対象に加わったことは、政府が物流分野の人手不足を制度面から解消しようとする明確な意思表示です。
さらに2025年には物流倉庫分野の追加も提案されており、ドライバーだけでなく倉庫業務を担う外国人材の確保にも道筋がつきつつあります。
外国人材の受け入れにあたっては、言語や文化の違いに配慮した職場環境の整備が欠かせません。制度の枠組みだけでなく、実際の運用面まで見据えた準備が必要です。
特定技能制度と物流分野の最新動向

特定技能制度は、深刻な人手不足が認められた産業分野において一定の技能と日本語能力を持つ外国人を受け入れる在留資格です。2019年の制度開始以来、対象分野は段階的に拡大されてきました。
物流分野に関わる最新の動きとして、自動車運送業の追加と物流倉庫分野の新設検討があります。
ここでは、それぞれの概要と今後の見通しを整理します。
2024年に追加された自動車運送業分野の概要
2024年3月29日の閣議決定により、特定技能1号の対象分野に「自動車運送業」が追加されました。
対象となる業務は、トラック運送、バス運送、タクシー運送の3つです。
物流事業者にとっては、トラックドライバーとして外国人材を雇用できる法的根拠が整ったことを意味します。
受け入れ見込み人数は、向こう5年間で最大24,500人と設定されています。
2024年12月には「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」の申請受付と出張方式での試験が開始されました。制度としてはすでに実施段階に入っています。
ただし、日本の運転免許の取得が前提となる点には注意が必要です。外国の免許をそのまま使用することはできず、日本国内での免許取得プロセスが別途求められます。
物流倉庫分野の新設に向けた動き
2025年5月、政府は特定技能の新たな対象分野として「物流倉庫」を追加する方針を示しました。
対象はトラック運送事業者や倉庫事業者が行う倉庫業務で、荷役作業や在庫管理、出荷作業などが含まれる見通しです。
注目すべき点は、専業の倉庫事業者だけでなく、トラック運送会社が自社で行う倉庫業務も対象に含まれることです。これにより、物流の一連のプロセスにおいて外国人材を配置できる範囲が大幅に広がります。
正式な閣議決定を経て、受け入れ開始は2027年頃と見込まれています。
現時点では制度の詳細が確定していない部分もありますが、物流事業者は今のうちから社内体制の整備を進めておくことが望ましいでしょう。
特定技能「自動車運送業」で外国人を受け入れる条件

自動車運送業分野で特定技能外国人を受け入れるには、企業側と外国人材の双方が一定の条件を満たす必要があります。制度の活用を検討する際には、対象業務の範囲や技能水準、企業に求められる要件を正確に把握しておくことが大切です。
ここでは、受け入れに必要な具体的な条件と手続きの流れを解説します。
対象となる業務と技能水準
特定技能「自動車運送業」の対象業務は、トラック運転者、バス運転者、タクシー運転者の3区分です。
物流事業者が主に活用するのはトラック運転者の区分となります。
外国人材に求められる技能水準は、「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」への合格です。
この試験では、安全運転に関する知識や車両の日常点検、荷扱いの基礎知識などが問われます。
あわせて日本語能力試験N4相当以上、または国際交流基金日本語基礎テストの合格も必要です。
日本の普通自動車運転免許(トラック運送の場合は中型または大型免許)の取得も必須条件となります。
免許の取得に要する期間やコストは、雇用計画に織り込んでおく必要があります。
受入れ企業が満たすべき要件
特定技能外国人を受け入れる企業は、国土交通省が設置する「自動車運送業分野特定技能協議会」の構成員になる義務があります。
協議会への加入は受け入れ開始後4か月以内に完了させなければなりません。
そのほか、特定技能制度全般に共通する要件として、外国人との雇用契約が日本人と同等以上の報酬水準であること、社会保険や労働保険への加入が適切に行われていること、過去5年以内に労働関係法令の重大な違反がないことなどが挙げられます。
1号特定技能外国人に対しては、「1号特定技能外国人支援計画」の策定と実施も求められます。
入国前のガイダンスから日常生活の支援、転職支援に至るまで、包括的なサポート体制を整える必要があります。
自社での対応が困難な場合は、登録支援機関への委託も選択肢となります。
試験制度と在留資格取得までの流れ
外国人材が特定技能「自動車運送業」の在留資格を取得するまでの一般的な流れは、次のとおりです。
まず、自動車運送業分野特定技能1号評価試験と日本語能力試験に合格します。続いて、日本国内で運転免許を取得します。その後、受入れ企業との雇用契約を締結し、出入国在留管理庁に在留資格の認定証明書交付申請を行います。
技能実習2号を良好に修了した外国人は、評価試験と日本語能力試験が免除される場合があります。
ただし、自動車運送業分野では運転免許の取得が別途必要なため、免許取得までの計画を含めた準備が必要です。
試験は日本国内のほか、将来的には海外での実施も検討されています。受け入れを急ぐ事業者は、試験スケジュールを定期的に確認しておくことをおすすめします。
物流改正法が現場運営に与える影響と対応策

2024年5月に公布された「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」および「貨物自動車運送事業法」の改正は、物流の効率化と適正な取引環境の整備を目指す内容です。
物流事業者にとっては、外国人材の受け入れと並行して、法改正への対応も進める必要があります。ここでは、改正法の主なポイントと現場運営への影響を整理します。
荷主と運送事業者の責務の明確化
改正法では、荷主や元請事業者に対して、運送事業者の労働環境改善に配慮する努力義務が明確化されました。
荷待ち時間の削減や運賃の適正化など、これまで商慣行として見過ごされてきた課題に法的な根拠が与えられた形です。
物流事業者の立場からは、荷主との交渉において法改正を後ろ盾にできるようになった点がメリットです。
適正な運賃を確保できれば、外国人ドライバーを含む従業員の待遇改善にも資金を充てやすくなります。
一方で、コンプライアンスの強化に伴い、書類管理や報告義務が増える点には留意が必要です。
社内の管理体制を見直し、必要に応じてデジタルツールの導入を検討することも有効でしょう。
外国人材の受け入れと現場体制の見直し
外国人材を現場に配置する際には、安全教育や業務指示の伝達方法を工夫する必要があります。
日本語能力試験N4レベルは日常会話が可能な水準ですが、専門用語が飛び交う物流現場では、ピクトグラムや多言語マニュアルの整備が効果を発揮します。
安全管理の面では、外国人ドライバーに対する運転技術の定期的なフォローアップや、事故発生時の対応手順の多言語化が求められます。こうした取り組みは、外国人材に限らずすべての従業員の安全意識向上にもつながります。
受け入れ後の定着支援も見逃せないテーマです。住居の確保や生活支援、日本語の継続学習など、職場の外まで含めたサポートが離職率の低下に直結します。
物流分野で特定技能外国人を受け入れる際に押さえておきたいこと
物流分野での特定技能外国人の受け入れは、2024年問題への対応策として実効性のある選択肢です。
自動車運送業分野の追加と物流倉庫分野の新設検討により、ドライバーから倉庫作業員まで、物流の幅広い工程で外国人材を活用できる見通しが立ちつつあります。
受け入れにあたっては、特定技能協議会への加入や支援計画の策定など、制度上の要件を確実に満たすことが前提です。
そのうえで、安全教育や多言語対応、生活支援といった実務面の準備を進めることで、外国人材が力を発揮できる職場環境を整えられます。
物流改正法への対応と外国人材の活用を両輪で進めることが、これからの物流経営には求められています。
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