
特定技能の対象に「物流倉庫(倉庫管理)」分野が追加されることが2026年1月23日の閣議決定によって正式に決定しました。物流・倉庫業界では慢性的な人手不足が続いており、この制度を活用した外国人材の受け入れを検討している企業も多いはずです。
この記事では、特定技能における物流倉庫分野の開始時期・対象業務・受け入れ要件・今から企業が着手すべき準備を、企業の実務担当者向けにわかりやすく解説します。
特定技能「物流倉庫」の開始時期【2027年4月施行予定】

2026年1月23日の閣議決定により、特定技能の対象分野に「物流倉庫」が追加されることが正式に決定されました。同時に「廃棄物処理」・「リネン供給」の2分野も追加が確定しており、合計3分野が新たに特定技能の対象となります。
ただし閣議決定はあくまでも「制度設計の決定」であり、現時点で即座に受け入れが始まるわけではありません。2026年度中に省令・告示の改正と技能評価試験の整備が行われ、実際の在留資格申請受付・外国人材の就労開始は2027年4月を目標としています。
制度整備のスケジュール
| 段階 | 時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 有識者会議での提起 | 2025年5月 | 3分野の追加が提案・審議開始 |
| 閣議決定 | 2026年1月23日(完了) | 倉庫管理など3分野の特定技能対象追加が正式確定 |
| 省令・告示整備・試験設計 | 2026年度中 | 詳細な運用要領・技能評価試験の内容策定 |
| 技能評価試験の実施開始 | 2026年度中(予定) | 試験の実施体制整備後に開始 |
| 在留資格申請受付・就労開始 | 2027年4月(予定) | 実際の受け入れが正式にスタート |
企業としては「2027年4月から採用できる」と理解した上で、今から準備を進めることが重要です。制度開始後にすぐ動けるよう、支援体制・採用計画・現場のシステム整備を前倒しで進める企業が先行優位を持てます。
特定技能「物流倉庫」の対象業務と範囲
特定技能の物流倉庫分野では、外国人材が従事できる業務として、物流倉庫内で行う貨物の入出庫、保管、そのほかの倉庫内作業が定められています。
業務区分及び特定技能外国人が従事する業務
物流倉庫分野において設定する業務区分は物流倉庫とし、当該業務区分において従事する業務は、物流倉庫において、倉庫内で行われる貨物の入出庫、保管その他の倉庫内各種作業を実施する業務とする。 なお、これらの業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例:事務所への連絡や報告、作業場所の整理整頓や清掃、台風等の接近に備えた貨物の移動や雨水侵入防止措置等)に付随的に従事することは差し支えない。
特定技能「物流倉庫」では、倉庫内で行う貨物の入出庫、保管、そのほかの倉庫内作業とされています。
引用元:特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針及び育成就労に係る制度の運用に関する方針及び特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針について(令和8年1月23日閣議決定)
具体的な業務範囲
実務のイメージとしては、入庫作業、入出荷時の検品、ピッキング、流通加工、出庫作業などが想定されています。
ただし業務範囲の詳細は2026年度中に策定される省令・告示で正式に確定します。現時点の情報は変更される可能性があるため、制度開始に向けて継続的に最新情報を確認することが必要です。
DX要件|ITシステム活用が求められる点に注意
物流倉庫分野で特に押さえておきたいのが、受け入れ企業側にITシステムの利活用が求められていることです。制度上、入庫管理・在庫管理・出庫管理の機能を持つシステム、またはそれに準ずる仕組みを活用していることが、受け入れ体制の重要なポイントとされています。
そのため、倉庫内作業だけを人手で回す体制ではなく、WMSやハンディターミナルなどを活用しながら、業務を効率的に進められる環境づくりが重要になります。これは、単に人手を補うだけでなく、物流現場の効率化や安全性向上もあわせて進めていくという制度の方向性にもつながっています。
現場のシステム化があまり進んでいない倉庫では、外国人材の受け入れを検討する前に、自社の運用体制を見直すことが大切です。とくに、入出庫や在庫の管理方法がアナログ中心になっている場合は、今後の受け入れ要件に対応できるかどうかを早めに確認しておくと安心です。
受け入れ企業が満たすべき要件
物流倉庫分野で特定技能外国人を受け入れるには、どの企業でもよいわけではありません。
まずは、自社が制度上の受け入れ対象にあたる事業者かどうかを確認することが大切です。
受け入れ対象となる事業者の種別
物流倉庫分野の特定技能外国人を受け入れられるのは、以下3種別の事業者です。
1. 倉庫業法の登録を受けた倉庫業者
自ら倉庫作業を実施する、倉庫業法上の「倉庫業者」として国土交通省に登録された事業者。
2. 貨物自動車運送事業の許可を持つ事業者
倉庫内作業を附帯業務として実施する運送会社。国土交通省の運送事業許可を有していることが前提となります。
3. 倉庫業者からの受託事業者
倉庫業者から業務委託を受けて倉庫内作業を行う構内荷役会社など。倉庫業法の登録は不要ですが、委託元(倉庫業者)との関係が明確である必要があります。
特定技能外国人を受け入れるには、自社が制度上の受け入れ対象事業者に該当し、倉庫作業を実施していることが前提です。
まずは、自社がどの区分に当てはまるのかを確認しておきましょう。
派遣労働による受け入れは不可
他の特定技能分野と同様、派遣労働による受け入れは認められていません。直接雇用・フルタイムが絶対条件です。倉庫業界では派遣労働者の活用が一般的ですが、特定技能外国人については直接雇用契約を結ぶ必要があります。
既存の派遣活用スキームとは別の採用・管理体制が必要になるため、人事・労務部門での準備が必要です。
企業が満たすべき主な要件
- 日本人労働者と同等以上の給与・待遇を確保すること
- 適切な支援計画を策定し、実施すること(または登録支援機関に委託)
- 社会保険や労働関係法令を含む、各種法令を適切に遵守していること
- 過去5年以内に、出入国関係法令や労働関係法令に関する重大な違反がないこと
- 分野所管省庁が設置する分野別協議会の構成員となり、必要な協力を行うこと
特に分野別協議会への加入は特定技能受け入れの前提条件となりますが、物流倉庫分野の協議会は現在設立準備中です。設立・加入時期が公表され次第、速やかに加入手続きを進めることが重要です。
受け入れ人数の目安

政府が設定した物流倉庫分野の受け入れ見込みは、特定技能1号として令和8〜10年度(2026〜2028年度)の3年間で11,400人です。
また、物流倉庫分野は育成就労制度の対象分野にも含まれており、令和9年度から2年間の育成就労外国人の受け入れ見込数は6,900人とされています。これにより、物流倉庫分野全体では、令和8〜10年度の3年間で合計1万8,300人の受け入れが見込まれています。
数字だけを見ると大きく感じるかもしれませんが、全国の倉庫業者や関連事業者全体で見れば、決して余裕のある人数とは言い切れません。今後の制度運用や受け入れ体制の整備状況によっては、早めに準備を進める企業ほど有利になる可能性もあります。
今から企業が着手すべき5つの準備
制度の本格運用は2027年4月からですが、準備に時間がかかる項目が多いため、今から取り組むことが有効です。
① 自社の受け入れ資格の確認
まず確認したいのは、自社が物流倉庫分野の受け入れ対象事業者にあてはまるかどうかです。
倉庫業法の登録状況や運送事業の許可内容、倉庫業者との業務委託の実態などを整理し、自社がどの立場で受け入れを進められるのかを明確にしておきましょう。
もし現時点で条件に合っていない場合は、業務の進め方を見直したり、協力会社との連携方法を検討したりする必要が出てくる可能性があります。まずは自社の現状を正しく把握することが、受け入れ準備の第一歩です。
② 現場のITシステム整備
物流倉庫分野では、受け入れ企業に対して、入庫管理・在庫管理・出庫管理ができるシステムの活用が求められています。
そのため、今の現場がどこまでシステム化されているかを確認しておくことが大切です。
たとえば、在庫管理が紙ベースのままになっていたり、入出庫の情報共有が十分にできていなかったりする場合は、今後の受け入れに向けて見直しが必要になるかもしれません。外国人材を受け入れる準備というより、現場全体の働きやすさや効率化につながる見直しと考えると、取り組みやすくなります。
③ 登録支援機関の情報収集・選定
特定技能外国人を受け入れるときは、支援計画の作成や生活面・就労面のサポートが必要になります。
自社だけで対応するのが難しい場合は、登録支援機関に委託する方法もあります。
ただし、登録支援機関によって対応できる範囲や費用感、得意な業種は異なります。受け入れ直前になって慌てて選ぶのではなく、早めに情報を集めて比較しておくことで、自社に合ったパートナーを見つけやすくなります。
④ 分野別協議会への加入準備
物流倉庫分野では、受け入れ企業が分野別協議会の構成員となり、必要な協力を行うことが求められます。
また、システム活用の状況についても、協議会に報告が必要になるため、協議会対応は後回しにできないポイントです。
今後、加入方法や具体的な運用ルールが公表されていくと考えられるため、国土交通省や関係団体の情報をこまめに確認しておくと安心です。制度が始まってから慌てないよう、事前に流れをつかんでおくことが大切です。
⑤ 採用ルートの整備
特定技能外国人の採用方法には、いくつかのルートが考えられます。
海外在住の外国人材を採用する方法もあれば、すでに日本国内にいる外国人材を採用する方法、将来的には育成就労から特定技能へ移行した人材を受け入れる方法もあります。
どのルートを選ぶかによって、必要な手続きや準備の進め方は変わってきます。だからこそ、自社がどの方法で人材を確保したいのかを早めに整理しておくことが大切です。採用計画を先に考えておくことで、その後の社内準備もスムーズに進めやすくなります。
制度開始前から動いた企業が人材確保で優位に立てる
特定技能の物流倉庫分野は2027年4月の制度開始に向けて着実に準備が進んでいます。人手不足が深刻な物流業界では、制度開始後に特定技能外国人の獲得競争が激化することが予想されます。今から受け入れ要件の確認・ITシステム整備・支援体制の構築を進めることで、制度開始と同時にスムーズに動き出せる状態を整えておくことが、長期的な人材確保の観点から重要です。不明点は行政書士や登録支援機関に早めに相談し、準備の遅れがないようにしておきましょう。